
久万高原町立久万美術館(久万高原町菅生)で現在、企画展「のぼって おりて またのぼる アートと福祉のはざまで」が開催されている。
同展は、今治の生活介護事業所「さんかくやま」(今治市唐子台東)に通う利用者の作品をメインに、施設での日常を展示しているもの。同所では「利用者の方の特性を社会の物差しとは違った角度から見ることで、その人の表現として捉え、その人のままで暮らしていけるようサポートする」をコンセプトに活動しており、18歳~60代が創作活動をはじめ、思い思いの過ごし方をしている。
「昨年、松山で開催された『MATSUYAMA ART BOOK FAIR』に参加し利用者の作品を出品した時に、同じく出店していた久万美術館の学芸員の方が興味を持ってくれ、声をかけいただいたのがきっかけ」と話すのは、さんかくやま職員の青砥穂高さん。2023年の立ち上げ当初から関わっているメンバーの一人で、現場対応から施設運営まで幅広くこなしている。「今回の展示では、登山者(同所での利用者の通称)の皆さんが制作した絵画や立体作品はもちろん、施設の映像や職員のインタビュー動画、業務日誌なども展示する。当施設では、日々のささいなやり取りやコミュニケーションが『表現』につながっているため、その制作物の背景にも目を向けることができるようになっている」と展示の意図を話す。「作品点数は大小さまざまだが、100点以上。中には共同制作の作品もある」とも。
今回の展示に当たっては、施設に関わっているさまざまなアーティストの作品も展示している。「イラストレーターから画家、地元の創作好きなおじいさんから、漂流物で創作活動を行うアーティストまで多種多様。皆、当施設にユーモアを持って遊びに来てくれる」と青砥さん。職員もデザイナーなど業界外出身のスタッフが多数在籍していることから、個性豊かなアーティストが訪れるという。
会期中、アーティストとコラボレーションした館内イベントも企画。5月18日は、国内外で広く活躍する「ASA-CHANG&巡礼」がライブを行うほか、6月21日は、ボイスパフォーマーで展示の映像制作にも携わった中ムラサトコさんによるワークショップとライブ、8月9日は、美術家・牛島光太郎さんによるワークショップを行う。
青砥さんは「作品の展示もさることながら、施設の映像やスタッフのインタビュー、業務日誌などから登山者(利用者)の皆さんの普段の生活が分かるような構成になっている。生活と作品が地続きになっている所を実際に見て触れて感じてほしい」と来場を呼びかける。
開館時間は9時30分~から17時(入館は16時30分まで)。月曜休館。観覧料は、一般=500円、高大生=400円、小中生=300円。8月31日まで。