しまなみエリアに点在するワイナリーやブリュワリー、酒造を周遊しながら「SHIMANAMIの酒」の魅力を体感するファムツアーが、11月13日・14日に市内で行われ、県内の旅行会社やメディア関係者らが参加した。

主催は「瀬戸内しまなみ海道活性化実行委員会」。観光事業を展開する「瀬戸内しまなみリーディング」や「愛媛県東予地方局今治支局」などが進めているしまなみ地域観光客滞在促進事業の一環で、今回は「SHIMANAMIの酒」にスポットライトを当てて行われた。
ツアーの企画を担当した「瀬戸内しまなみリーディング」の金材旭さんは、「しまなみ地域にはまだ知られていない多くの価値がある。観光資源として活用できるコンテンツを模索していくなかで、しまなみの酒を中心としたツアーを企画するに至った」と話す。
しまなみエリアの魅力のひとつでもある「酒」にフィーチャーして2泊3日で行われた、ファムツアーの様子を体験レポートする。
目次
●ファムツアー体験1日目<大三島→今治>
「pizzeria TAKIBI」でピザと地ビールのペアリングを堪能
大三島でぶどうの栽培から行って10年「大三島みんなのワイナリー」
島のものにこだわったフレーバー楽しめる「大三島ブリュワリー」
商店街活性化にも貢献、クラフトビールビアバー「今治街中麦酒」
●ファムツアー体験2日目<今治→大島>
「SHIMANAMIの酒」ツアーのスタートは、大三島の釜焼きピザの店「pizzeria TAKIBI」からはじまった。「pizzeria TAKIBI」では、同じ島内にある「大三島ブリュワリー」の地ビールを注文することができる。人気のビール「ブロンドエール」はクセの少ないスタンダードな味わいで、クラフトビールが苦手な人にも飲みやすく、ツアー参加者らも自家製ピザとビールとのペアリングに舌鼓を打った。


続いて足を運んだのが、有機農家が作る大三島のリキュールショップ「大三島Limone」。店内には、自家製リモンチェッロやライムチェッロなどのリキュールをはじめ、100%ジュースやシロップ、調味料などが並ぶ。「大三島の自家農園にて有機・無農薬栽培で果物を育て、自家工房にて自家製法で作っている」など、店主から直接説明を受けながら、参加者らは思い思いに土産選びを楽しんだ。

次に向かったのが、大三島でブドウの栽培から醸造、販売まで行っている「大三島みんなのワイナリー」。店頭スタッフの川田祥子さんによると「2015(平成27)年に大三島で植樹を始めてから、今年で10周年。おすすめのワインは島紅(赤)、島白(白)、島みかんスパークリング」という。参加者はワインの飲み比べを堪能した。

その後、「大三島みんなのワイナリー」のワインを持参し、車で5分ほどの「台(うてな)キャンプ場」のビーチに移動。今回のツアーの目玉でもある、ワインピクニックを体験した。ビーチにレジャーシートを広げ、ワインやおつまみを味わうこの体験コンテンツは、ツアー参加者からも「プライベートビーチのような場所でワインを飲みながらピクニックが楽しめ、島ならではの魅力を感じられた」との声が聞かれた。

また「大三島みんなのワイナリー」の川田さんも、「ワインバゲッジの中にお客様の好きなワインやジュースを入れて、大三島の自然な景色の中で楽しんでもらえるのは貴重な体験。地域の酒を活用した良い観光コンテンツになるのでは」と話した。

ワインピクニック終了後は、島のものにこだわったフレーバーのビールが楽しめる「大三島ブリュワリー」へ。ツアー参加者は5種類あるクラフトビールの中から、お気に入りの一杯を選んでオーダー。なかでも人気だった「コーヒーペール」は、4月に大三島に新しくオープンした自家焙煎コーヒー店「munimal cafe」のコーヒー豆でフレーバーをつけたビール。ツアー参加者からも「ビールとは思えない、まるでコーヒーのような香り」と驚きの声が上がった。

ツアー1日目の最後は、今治商店街にあるブリュワリー「今治街中麦酒」へ。同店はタンク併設型クラフトビールビアバーで、2020年のオープン以来、商店街活性化のためにオープンな場づくりを行っている。

ツアー参加者から好評だったのは、好きなビール3種が味わえる「テイスティングセット」で、今治の無農薬かんきつを使用したビールなどの飲み比べを堪能した。

ファムツアー体験2日目は、1831年(天保2年)創業の今治市で唯一の造り酒屋「八木酒造部」を見学。8代目社長の八木伸樹さんによる案内で酒蔵をまわりながら、「全生産量の9割以上が愛媛県産米にこだわっている」など酒造りへの想いを聞いた。

酒蔵見学後には、SAKE COMPETITIONで6位を受賞した「山丹正宗 初しぼり(無ろ過生原酒)」や、ANAの機内でも提供されている「山丹正宗 冷醸酒」、キリッとした後味が特徴の「山丹正宗 しずく媛」の試飲も行われた。


ファムツアーの最後は、ごち網体験と海洋熟成酒を味わうため大島へ。ごち網とは、魚群を見つけてから網を投入し、引き網を狭めて魚を網に追い込む瀬戸内の伝統漁法のことで、おもに鯛など中層を泳ぐ魚が釣れる。ツアー参加者は、村上海賊ゆかりの地である「能島水軍」から船に乗って沖合に出て、地元漁師が行う「ごち網漁」を間近で見学した。

その後「能島水軍」のレストランで、昼食とともに大島の海洋熟成酒を味わった。海洋熟成酒とは、酒を瓶ごと光の届かない深海に1年間沈め、長時間寝かせることで熟成させた酒のことで、口当たりがまろやかで飲みやすいのが特徴。昼食で提供されたご当地の「宮窪鯛めし」とともに、この希少な海洋熟成酒を堪能し、2泊3日のファムツアーは幕を下ろした。

ツアー参加者の「日本航空」安田桃子さん
ファムツアー体験後に、参加者の1人である「日本航空」の安田桃子さんに感想を伺った。「旅行先では美味しいご飯とお酒に期待している人は多く、今回のファムツアーでは今治の酒と食にフォーカスしている点が良かった」と話す。また、しまなみ=サイクリングというイメージがあったというが、「今回、ワインピクニックという新たな体験ができて、自転車以外にもアプローチできる観光コンテンツがあると感じた。今治を旅の通過点で終わらせないよう、滞在時間が長くなる取り組みに期待している」とも。

ファムツアーを企画した「瀬戸内しまなみリーディング」の金材旭さん
今回のファムツアー企画を担当した「瀬戸内しまなみリーディング」の金材旭さんは、「酒というテーマは交通や年齢など難しい点もあるが、ワインピクニックが好評だったように、酒×ピクニックなど他のコンテンツと掛け合わせることで、よりハードルが下がると感じた」と振り返った。さらに「いずれは中四国向けだけでなく、国内やインバウンドも視野に入れた体験を提供していきたい」と意気込む。