「野口養蜂園いまばり」(今治市大西町)が現在、今春採れた蜂蜜の瓶詰め作業に追われている。
同園を営むのは養蜂家の野口敬介さん。郵便局員として長年勤めてきたが、昨年退職。妻・千恵美さんの祖父、父が2代にわたって営んできた「野口養蜂園」(新居浜市)を今年に入って継いだ。
「元々、継ぐ気があったわけではなかった」と話す2人。「自然農法に興味があり、ここ数年、本業を続けながらチャレンジしてきたが、仕事にするには難しさもあった。そんな中でミツバチが年々減ってきていることや、ノウハウを持った養蜂家が高齢化してきている事実に触れ、『聞いて学べるうちに受け継ぎたい』『次の世代につなげていきたい』と養蜂を継ぐ決意をした」と敬介さん。
千恵美さんは「幼い頃から父の作業を見てきて、採蜜時期には手伝ってきた。自然に身を置く仕事ということもあり、健康のためにも(夫が養蜂を継ぐことについて)賛成した」と振り返る。2人共たまたま姓が「野口」同士だったため、「野口養蜂園」の屋号もそのまま受け継いだ。
継ぐことを決意して以降、冬の間に山を整備するなど環境づくりを行い、初春に新居浜で飼っていた西洋ミツバチの一部を巣箱ごと移動。「まずは実験」という気持ちで、大西町と菊間町の山間部に13箱ずつ設置した。すると5月・6月の採蜜シーズンを経て、「予想以上に蜜が採れた」という。蜂の群れが順調に大きくなったことで分蜂も起こり、当初の巣箱に加えて新たに8箱を増やすことにも成功した。
現在は採取した蜜の瓶詰め作業を順次行い、販売を始めている。商品は、900ミリリットル(3,500円)と225ミリリットル(980円)の2種で、いずれも自然の野山で採蜜した百花蜜。蜂蜜はろ過して不純物は取り除くが、加熱などの加工は行っていない。敬介さんは「今治の自然の豊かさを改めて実感した」と話す。
「採蜜はうまくいったが、これから害虫からハチを守ったり、越冬させなければいけなかったりと、まだまだ難関が待ち受けている。義父に習いながらまずは1年を経験し、2年、3年と継続していきたい」と敬介さん。今後については、「より難易度が高いとされる日本ミツバチの飼育にも挑戦したい。いずれは、西洋ミツバチと日本ミツバチを半々で飼育できたら」と意気込む。
イベント出店のほか、インスタグラムでも販売している。