今治市長沢に11月16日、「ゆうゆカフェ」がオープンした。店長を務める兄の矢野悠介さんと、弟で自閉症スペクトラムの矢野つばささん兄弟が、それぞれの経験と得意を生かし、アトリエ併設のカフェとして新たな一歩を踏み出した。
つばささんは昨年まで市内の作業所に通っていた。一方、兄の悠介さんはこれまで看護師として高齢者施設などで勤務。仕事の中で入居者にコーヒーを振る舞ったり、おやつ作りを企画したりする機会もあり、「飲食に関わる時間が好きだった」と話す。周囲からも「生き生きしている」「飲食の仕事が向いているのでは」と声をかけられていたという。
転機は2~3年前。母・久美さんに誘われ、悠介さんが知人が開いていたコーヒー教室に通い始めたことだった。コーヒーの奥深さに魅力を感じ、今年に入りカフェ開業を決意した。
もともと仲の良い兄弟。久美さんは、つばささんが描く絵の大ファンでもある。「カフェをやるなら、アトリエも一緒に開いたらどうか」と提案したという。たまたま、一家にとって理想的な場所だった倉庫物件に空きが出たことも後押しとなり、アトリエ兼カフェとしての構想が具体化。兄弟の父親が4カ月ほどかけてフルリノベーションを行い、現在の店舗が完成した。
ランチメニューは日替わりで、「おにぎりランチ」「丼ランチ」「薬膳カレーランチ」(以上700円、ドリンクセットで1,000円)などを提供。ドリンクは、店内で豆を焙煎する「ゆうゆブレンド」(500円)をはじめ、コーヒーやみかんジュースなどをそろえる。
店内では、つばささんの絵も展示・販売している。つばささんはアトリエを拠点に、絵を描いて過ごすほか、カフェも手伝う。久美さんは「病院の先生から、この子の絵を見て『幸せな子ですね』と言われたことが何よりうれしかった」と話す。「幼い頃から絵を描くのが好きで、数年前に初めてキャンバスを渡したら、私の好きなバラの絵を描いてくれた。そこからどんどん創作するようになった。こういう場があることで、同じような境遇の人にとっても自信につながれば。将来はギャラリーも併設したい」と思いを語る。
つばささんは「(たくさんの人に絵を見てもらえて)いい気持ち」と話す。「大事な弟なので、一緒にやっていけたらいいなと思った」と悠介さん。「カフェもアトリエも、誰でもフラットに立ち寄れる場所にしていきたい」と話す。
営業時間は9時~16時。