今治市を含む東予から南予まで愛媛県内全域の怪異を書き下ろした実話怪談集「愛媛怪談」(竹書房)が3月30日に発売された。著者は南予出身の声優で怪談師の三好一平さん。
四国初となる「ご当地怪談」に特化した一冊となる同書は、全国で唯一、神名を県名に持つ愛媛県(古事記:愛比賣)を舞台に、三好さんが県内各地を回って聞き集めた不思議な話や怖い話を収録した。
東予地方では、今治市玉川町の楢原山(ならばらさん)に伝わる「人を喰(く)う猿神とたたりの伝承」をはじめ、西条市の止呂橋、新居浜市の別子銅山、四国中央市の姫ヶ嶽など、地元住民の間でひそかに語り継がれてきたエピソードを網羅している。
三好さんは、趣味の時代から含め約30年にわたり怪談や民間伝承を収集してきた。「愛媛の怪異や民間伝承はあまりにも魅力的である一方、まだ十分に知られていない」という強い思いが執筆の動機になったという。
楢原山について、三好さんは「訪れたときに感じたのは山全体に漂う静けさ。取材した方も『あそこは昔から何となく近寄りたくない』と、言葉にできない違和感を共有していた。『巨大な猿』の話を語るお年寄りの真剣な表情には、冗談ではない説得力があった」 と、現地取材時の特異な空気感を振り返る。
読者に向けては、「自分の生活圏と重ねながら読んでほしい」とメッセージを送る。「読み終えた後、自分の身近な場所にも物語が眠っているのではないかと意識するだけで、本の外の世界まで怪談が続いていく感覚を味わえるはず。皆さんが暮らしている場所の物語を、大切にするきっかけになれば」 と話す。