
「15年後の2040年に、自分や周りの環境がどうなっているか」をテーマに、未来マップを作成する授業が3月3日、今治市立大西小学校(今治市大西町)で開かれた。
授業を受けたのは約50人の6年生。同市出身で、個人や企業向けにコーチングサービスを提供する古浦枝里さんら5人のコーチが講師を務めた。
授業は1時間目から6時間目まで、丸一日をかけて行った。午前中は、ワークブックを使いながら「今の自分は何色か」「かけられてうれしかった言葉は」などの質問を通じて自分に向き合った児童たち。その中で、「1年後に今よりなりたい自分になるためには、何をするか」など、少しずつ未来を意識しながら思いをアウトプット。自分にとって心地いいことや興味のあること、好きなことから自分のありたい姿を描いた。
午後の時間には、自分の好きなものをプリントアウトするなどして画用紙に貼り付け、ビジュアル化した「未来マップ」を制作。その後、「2040年に夢がかなった」という設定で15年後の自分になり切り、かなえた夢とそれまでの道のりを、クラスメートに共有した。「バレーの選手になりました」「小学校の先生になれました」など一人ずつ発表する度、教室は「おめでとう」という言葉と共に拍手で包まれた。
発表を終えた児童からは「好きなことを考える時間が楽しかった」「こんなに最高なマップが自分でも作れるんだと思った。習い事のチームでも作ってみたい」などの声が聞かれた。担任の木村愛教諭は「みんなが楽しそうに将来のことを考えていたのが印象的だった。2040年に、実際にみんなのところに聞きに行きたい」と話していた。
授業を終えた古浦さんは「自分の身近なことから発想して、職業としてだけでなく、いろいろな観点から夢について想像したことで、『楽しい未来が待っている』と思ってくれたのでは。子どもたち一人一人の力に期待している」とほほ笑む。
古浦さんは、4人の子どもを育てながら普段は市内の病院で働く薬剤師。「子育てに必死になる中、いつからか、子どもに対して自分の価値観を押し付けていたことに気がついた。子どもに伴走しながら本来の魅力を引き出す『コーチ』のような役割になりたいと思った」ことから、自らコーチングを学んだ。実際に自身の子どもたちがコーチングを受けた際には、「自分が思っている以上に、いろいろなことを考えているし、表現する力もある」と驚いたという。
「『自分はこうしたい』『こんなことがやってみたい』と言える子どもが増えれば、10年後の未来が変わるかもしれない」と思ったことで、未来マップ授業のファシリテーター講座を受講し、2022年に講師としての活動を開始。講師育成にも携わりながら、本年度は県内11校で授業を開いた。
古浦さんは「自分自身、もっと早くにコーチングに出合っていれば人生が変わっていたかも。コーチングは、自分の気持ちを大切にするためのスキル。多くの子ども、そして大人に広めていきたい」と意気込む。