
今治の中心部にある今治商店街に地域交流拠点「くろごま団地」が開設して、9月2日で1カ月がたった。運営に取り組むのは、昨年度まで地域おこし協力隊として活動していた福地立憲さん。商店街の空き店舗を改装し、シェアキッチンや一棚本屋などを備えた新しいコミュニティスペースとして整備した。
屋号は、かつて同所で営業していたレディースファッション店「クロダ」に由来する。そこに「小さくても栄養価が高く、力を秘めたごま」のイメージを重ね、「団地」という言葉で人が集まり活動する場所を表現した。ひらがな表記には「柔らかく、親しみやすい場所にしたい」という思いを込める。デザイナーとしても活動する福地さん。ロゴには、モンスターが本やパソコン、ポットを手にしている姿を描き、「この場所を自由に使ってほしい」というメッセージを添えた。
福地さんは埼玉県出身。同県でデザイン事務所を営みながら仲間とキッチンスタジオを運営し、料理教室や食のイベントを展開しながら、空き店舗を再生する価値を体感してきた。「広い場所でやりたいと思っていたときに、今治で協力隊をしていたタイミングでこの建物のオーナーと出会った。すてきな方で、ここでチャレンジしようと決めた」と振り返る。
店内には、月2回から利用できるシェアキッチン「くろごまキッチン」を整備。飲食店営業許可を取得済みで、初期投資なしで自身の店を開くことができる。「くろごまブックス」では、本棚の一区画を借りて自分の好きな本を販売できる。棚オーナーは一日店長を務めたり、関連イベントを開いたりできる仕組み。
「年齢や職種に関係なく、心の中で『何かしたい』と思っている人に来てもらえたら」と福地さん。自身の経験から「人との出会いが人生を良い方向に導く」ことを実感しており、「挑戦する人に伴走して応援する場にしたい」と力を込める。
改装作業は市民参加型で進めており、今後も共に手を動かしながら施設を育てていくという。「お金や労力をかけすぎず、こだわりすぎず、緩やかにつながる場所にしていきたい」と話す。
今後は、飲食を提供するイベントや本を介した交流などを展開していく予定。福地さんは「この場所だけにとどまらず、商店街全体のシャッターを開けたい」とも語り、空き店舗の相談にも応じていく姿勢を見せる。