
今治・大島で「島四国へんろ市」が行われた4月21日、FC今治高校明徳校の「チャレンジコース」に在籍する2年生が、島の景観や文化に触れ、地域の人々との交流を深めようと、歩き遍路に挑戦した。
今治市大島の島四国とは、四国八十八カ所霊場を模して島内八十八カ所に開所された霊場のこと。札所のほとんどは1807年の開創から島人たちがお大師さまを慕って長年守り続けてきた小さなお堂。毎年、春の季節には3日間の縁日「島四国へんろ市」が開かれ、各札所の「堂守(どうもり)」がお接待をしながらお遍路さんを迎えて島全体がにぎわう。
同校チャレンジコースの菅野耕太教諭によれば、「チャレンジコースに在籍している生徒は、中学校時代に学習や人間関係に悩んだ経験があったり、コロナ禍の影響もあったりと、インドア派が多い。もっと外の世界とつながりを広げるため何かできないかアイデアを考えていた」と話す。
そうした中、2年生で、大島出身の小田乃野夏さんが「島四国」を歩くことを提案。小田さんは「小学校の頃から島四国は当たり前の文化。みんなで取り組む野外活動としてぴったりだと思った」という。菅野教諭は「面白そうだ」とこれに共感。小田さんがその日のうちに企画書を作成し、校長に直接プレゼンテーションしたところ、実施が決定。当日に至るまで、クラス全員での歩行訓練や、リーダーと教員による下見などを経て、実現にこぎ着けた。
当日は29人の生徒らが複数班に分かれ、33番札所の高龍寺(今治市吉海町名)から44番札所の十楽庵(吉海町臥間)までのおよそ10キロの遍路道を歩いた。当日は晴天で、生徒らは汗をかきながら山道を完歩。39番札所の宥信庵(吉海町正味)では、待ち受けていた堂守の人々からお接待を受けた。
堂守をしていた藤本ゆかりさんは「今治港からのフェリーがあった時代には、へんろ市になると船が傾くほどお遍路さんが来ていたが、時代とともにかなり少なくなってきた。高校生のような若い子が来てくれると新鮮」とほほ笑む。生徒たちはもらった菓子で糖分を補給しながら、その後も各札所を巡り、およそ4時間かけてゴールした。
歩き終えた生徒は「山の中は険しかったが、風が冷たくて涼しかった」「市内出身で、島にこんな文化があることを知らなかった」と感想を話していた。菅野教諭は「生徒たちの心身のタフさや、粘り強さが感じられて、うれしかった」と振り返る。
小田さんは「みんなしんどかったと言いながらも、楽しそうで良かった。年3回、2年で一周する計画を立てているので、みんなで八十八カ所を踏破したい」と意気込みを見せる。