
今治市朝倉で民間の放課後児童クラブや認可外保育園を運営する子育て支援団体「Mother earth.(マザーアース)」が、地域に眠る古民家を改修し、子どもたちが安心して集える新たな拠点の開設を計画している。現在、クラウドファンディング(CF)で支援を呼びかけている。
同団体は昨年4月に民間の放課後児童クラブ「Mother earth.」を開設。当初10人だった児童数は、2年目に入り18人にまで拡大した。本年度からは未就学児を対象とした認可外保育所「Mother earth.Pre School」も開園。これまでの拠点が手狭になったことから、新たな拠点整備を決断した。
今回改修を予定しているのは、築約100年の古民家。持ち主の亡くなった母親がかつて園長として保育に携わっていた縁もあり、「子どものことならぜひ使ってほしい」と快く賃貸契約に至った。床や天井など経年劣化が進んでいるため、子どもたちと大工が協力し、セルフリノベーションで新たな息吹を吹き込む予定。
代表の越智友美さんは今治市朝倉出身。約20年間保育士として市内で勤務してきたが、体調を崩したことを機に健康への意識を強く抱くようになった。その後、健康サロンを開業しセラピストとして活動する中で、「保護者も子どもも、心身ともに疲弊している」という課題を痛感。一度は保育士を退職しサロン経営に専念するも、「利益を子どもたちのために使いたい」との思いから「Mother earth.」を設立した。現在は保育士資格を持つ3人のスタッフと数人のボランティアメンバーで、子どもたちの成長を見守っている。
越智さんは長年の保育経験から、「自然の中で思い切り体を使ったり、五感に刺激を受けたりする機会が少なくなっている」と感じていたという。「やりたいと思うことを思いきりやらせることで、やってはいけないことの判断力やルールを作る力、物事を見通せる力がつく」という考えの下、日常の保育ではあえてプログラムを用意しすぎず、子どもたち自身が行く場所を決めるなど、自主性を重視する。保育のフィールドは、朝倉や今治市内の川、山、海、公園など多岐にわたり、越智さんは「毎回、自然の中で新しい遊びが子どもたちの中から生まれてくるので、見ていても面白い」とほほ笑む。
「地域の中で大人の姿を見て育つことで、夢を持つきっかけにもつながる」と、地域の店を訪れての職場体験やワークショップなども積極的に行っている。「いろいろな体験の中で子どもたちのさまざまな側面が垣間見られ、得意なことを認めてあげることで子どもたちが変わっていく姿を見てきた」と越智さんは目を細める。
新しい拠点について、「子どもたちはもちろん、地域の方だれでも、みんなが集まれる居場所にできれば。顔の見える関係性を作ることで、互いが助け合える『むら』のような場所を作っていきたい」と展望を語る。
CFは6月6日時点で、目標金額300万円の34%に当たる103万6,000円の支援が集まっている。越智さんは「子どもたちを育てるのは学校だけではない。地域のみんなで手を取り合い、子どもたちと共にこの場所を作り上げることが、未来への希望につながると信じている」と支援を呼びかける。
CFは6月30日まで。