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今治・大島の千年松「満天の湯」改修へ CF好調、初日で目標達成

今治市大島の旅館「千年松」。右から、社長で長女の矢野まどかさん、母の矢野真弓さん、次女のさくらさんと夫の引橋亮介さん。(写真提供=千年松)

今治市大島の旅館「千年松」。右から、社長で長女の矢野まどかさん、母の矢野真弓さん、次女のさくらさんと夫の引橋亮介さん。(写真提供=千年松)

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 今治市大島の旅館「千年松」(今治市吉海町名駒)が進める大浴場「満天の湯」の改修工事に向けたクラウドファンディング(CF)が好調な滑り出しを見せている。9月12日の開始初日で目標額の100万円に到達。6日目にはセカンドゴールの250万円も突破し、公開9日目には達成率270%を超えた。現在は400万円を目指し、引き続き支援を募っている。

今治・大島の旅館「千年松」 大浴場「満天の湯」

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 「満天の湯」は、同館の創業者である故・矢野満直さんが地元の大島石をふんだんに使って構想し、造り上げた大浴場。ところが完成を目前にして満直さんは急逝。その後、妻の真弓さんは、当時小学生と乳幼児だった4人の子どもたちを育てながら、女将(おかみ)として25年にわたり宿を守り続けてきた。

 10年ほど前、長女のまどかさんが教師生活に区切りをつけ、宿の経営に加わった。2年前には東京でファッションデザイナーとして活躍していた次女のさくらさんも、夫の引橋亮介さんと共に宿に戻った。

 さくらさんは振り返る。「生まれ育った大島の環境と、女手一つで育ててくれた母の存在があったからこそ、自分たちも宿を守ろうと思えた。結婚という人生のタイミングも重なり、大きな選択をした」

 今年、まどかさんが経営を正式に引き継ぎ社長に就任。長年の使用によって劣化した「満天の湯」の改修を検討する中で、取り壊し案も浮上した。しかし姉妹は「父が残した思いを、未来につなぎたい」と修復を選択。改修資金の一部をCFで募ることに決め、入浴券や地元食材を使った食事プラン、貸し切り利用など、多彩な返礼品を用意した。

 改修では新たに「寝湯」を設け、湯に漬かりながら瀬戸内海の景色をゆったり楽しめる空間に生まれ変わる。すでに男湯は改修工事が完了しており、今秋には女湯も工事予定。

 真弓さんは「(CFの好調は)想定外。改めていろいろな方の応援の思いを知ることになり、感無量。温かい言葉をたくさんもらい、これからの活力になる」と感慨深げに話す。「いつの日か子どもたちに経営を引き継ぐまでは『やろう』と走ってきた。今、家族が帰ってきてくれて、パワーが増えたことで新しいことにも挑戦できる」とも。

 三女と長男も、アニメーション作家や地域おこし協力隊といったそれぞれの道で活躍している。「自分の好きなことを究め、力を付けてくれたからこそ、新しいチャレンジができる」と、自立した子どもたちの成長に感謝する。

 「一度大島を離れたからこそ、この豊かな環境を大事にしていきたい気持ちが強くなった。この宿が、人と人、自然と人、時間とのつながりを感じられる場所であり続けるために、これからも頑張っていきたい」とさくらさん。「自慢の風呂に、ぜひたくさんの人に入りに来てもらいたい」と呼びかける。

 CFは10月27日まで。

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