今治市出身でサイボウズ社長の青野慶久さんが7月8日、FC今治高校里山校(今治市矢田)で特別授業を行った。
青野さんは今治市玉川町出身。大阪大学卒業後、松下電工(現パナソニック)に就職するも3年で退職。1997(平成9)年、情報共有のためのソフトウエアやクラウドサービスを手がけるサイボウズを創業し、現在では1000人以上の社員を率いている。
FC今治高校里山校は、元サッカー日本代表監督の岡田武史さんが学園長を務め、4月に開校したばかりの私立高校。午前中は一般科目、午後からは野外活動や探究学習などの実習活動に重点を置くなど、ユニークなカリキュラムが注目を集め、1期生の半数以上が県外出身者になるなど異色の高校として知られている。
同校では毎月、「時代を切り開く姿勢を学び、自分の好きなテーマを見つける」ことを目的に、さまざまな業界の先駆者を招いての特別講座を開いており、今回の授業もその一環で行った。
授業では「未来が読めない中で入学してきた1期生は、起業家精神を持っていると思う」と切り出した青野さん。科学やコンピューターなど好きなものに傾倒してきたという学生時代から今に至るまでを振り返り、「好きなことがあると、人間は自然と努力する」などと生徒に伝えた。
講義の中では、挫折したエピソードもありのままに話した青野さん。創業後、3年で上場するなど当初は順風満帆だったが、その後売り上げが伸び悩み、社員の離職が相次ぐなど厳しい時期が続いたという。「追い詰められ、逃げ場もない状況に絶望した」青野さんを救ったのは、かつて勤めた松下電工の創業者、松下幸之助の著書だったという。
「本屋でたまたま手に取った松下幸之助の本に、『真剣に志を立てろ』と書いてあった。自分には真剣さ、つまり命を懸けるほどの本気度が足りなかったと自覚した」と青野さん。その後、改めて「人生を懸けて達成したい目標」を立て、覚悟を決めて真剣に仕事に向き合った結果、社内にもその熱意が伝わり、業績も好転したという。
話を聞いた生徒からは、「失敗することは怖くないのか」「チームメートとうまくコミュニケーションを取るためのコツは?」など、次々に質問が飛び出した。 1時間かけて全てに答えた青野さんは「自分はどんな未来をつくりたいか。常識を疑って、考え続けてほしい。それが未来を創造することにつながる」と話し、授業を締めくくった。
授業を終え、生徒たちからは「これからの人生に生かしていきたい」「『成功』も『失敗』も自分次第ということにハッとした」「目標に向かって努力したい」などの声が聞かれた。