
飲食店のメニューを配達するサービス「しまデリ」の提供が4月に始まり、5月23日、初めて利用された。
今治・大三島でフードデリバリーサービス 届けられた「Bubuka」のオードブル
「しまデリ」は、大三島内の飲食店のメニューを宿泊施設へ配達するサービス。運営を手がけるのは、東京都中央区内に本社を置く経営コンサルティング会社「R3」。同社代表の西塚絵理さんによれば、島内でゲストハウスなどの素泊まりの宿泊施設は増加傾向にあるものの、飲食店やスーパーの営業時間と旅行者の滞在時間が合わず、特にサイクリストなど交通手段のない宿泊客にとっては、食事の選択肢が限られるという課題があった。
西塚さん自身も3年ほど前に、初めて大三島を訪れた際、家族でゲストハウスに宿泊し、「夕食の確保に困った経験がある」と振り返る。「都会の感覚で何とかなるだろうと思っていたら、営業している店がなく困った。観光客の多い島で、これは課題だと感じた」。この原体験が「しまデリ」立ち上げの大きなきっかけとなった。
その後、当時の勤務先から独立し、起業した西塚さんは「せっかく縁のある島の課題を何とかできないか」とサービス開始に向けて動き出した。大三島を「日本の原風景のよう」と表現し、その魅力に強く引かれている西塚さん。現在は島内に今治営業所を構え、東京との2拠点生活を送る。
「しまデリ」では、宿泊客が事前に注文した島内の提携飲食店のメニューを、配達員が宿泊施設まで届ける。夕食と翌朝の朝食が注文可能。宿泊施設の予約時にサービスの案内が届く。個人経営が多い大三島の飲食店の状況を考慮し、宿泊の8日前までに予約が必要。フードは温めるなどの簡単な調理で完成するミールキットとして届け、必要に応じてカセットコンロなどの調理器具も貸し出す。
フードだけでなく、飲料やデザートのデリバリーのほか、自社で用意するパーティーグッズや宿泊施設と連携した飾り付けのサービスも提供する。西塚さんは「せっかくの旅行を、島の魅力的な食事と演出で楽しんでほしい」と説明する。
現在、「Bubuka 歩歩海(ぶぶか)」(今治市大三島町宗方)、「Co-Living & Cafe SANDO(コリビングアンドカフェサンド)」(大三島町宮浦)など12店舗の飲食店と、「オオミシマスペース」(上浦町甘崎)、「海sora」(大三島町宗方)など12の宿泊施設がサービスに参画する。
5月23日にはオオミシマスペースの宿泊者が初めて「しまデリ」を利用し、「Bubuka 歩歩海」のオードブルが同施設まで届けられた。オオミシマスペースを経営する増田茂樹さんは「当施設では食事を提供しておらず、近隣には夜営業の飲食店がほとんどないため、予約時にお客様へその旨をお伝えしたり、宿にカップラーメンを置いたりして対応してきた。それでも、お客さまの3~4割からは飲食店の場所を尋ねられるなど、課題に感じていた。『しまデリ』によって食事の選択肢が広がることで、お客さまにさらに喜んでいただけるサービス提供につながると期待している」と話す。
西塚さんは「今後も提携店舗・施設を増やしていきたい。大三島だけでなく、他にも課題を抱えている島しょ部の解決策になれば」と意気込みを見せる。「島のインフラとして、なくてはならない存在になれれば。島の体験をより豊かにしたい」とも。