今治・神宮(かんのみや)の田んぼで6月14日、愛媛県のプロバスケットボールチーム「愛媛オレンジバイキングス(以下バイクス)」による田植えイベントが開催された。チームが新たに立ち上げた「バイクス米プロジェクト」の一環。
同プロジェクトを担当するのは、クラブを運営するエヒメスポーツエンターテイメントに昨年新設された「まちづくり部」。担当の山本逸平さんは「スポーツチームは普段『応援される側』。一方で、地域に根差したチームだからこそ、 チームが地域を『応援する側』にまわることで、街に良い好循環を生み出すことができるのでは、という思いから地域課題の解決に向けて取り組んできた」と話す。
同部ではこれまで、県内の子ども食堂への食材や試合観戦券などの寄付を行う「ばいくすこども食堂」の活動を展開。その中で「子ども食堂」の継続的な運営に関する課題や現状に直面し、模索を重ねてきた。子ども食堂関係者や市民らと議論を交わした結果、地域の既存の飲食店を子ども食堂化する仕組み「まちまるごと!ばいくすこども食堂」を今年4月に立ち上げた。
一方で、この取り組みを維持するための資金調達が同時に課題となった。そこで、運営資金を募るクラウドファンディングの実施を計画し、その返礼品として活用するお米を自ら育てる「バイクス米プロジェクト」を構想したという。
この米作りが実現へ向かった背景には、今治市出身で、Bリーグのスポンサーであるインフロニア・ホールディングスの関連企業に勤務する白川英志さんの存在があった。市内での冠試合の主催などを通じて連携を深める中、英志さんの実家が今治で農業を営んでいることが判明。これを機に、今治市内を一つの拠点とした同プロジェクトが動き出した。
英志さんの実家「白川ファーム」は、オーナーである2代目の父・一忠さんと母・京子さん、英志さんの兄・悦男さんらおよそ10人で米作を中心に農業を営んでいる。悦男さんはこの相談を受けて「チーム、農家、地域がウィンウィンになれる取り組み。何よりも面白そうと思った」と振り返る。「農業の仕事はどうしても下を向いて作業することが多い。でも、子どもや地域を巻き込んで一緒に上を向いて笑えるのは楽しそうだと思った。世代を超えて交わり、課題解決を目指そうとするバイクスの方針や山本さんの熱意に賛同した」とも。
田植え当日は、今治市民を中心に27人が参加。チームからもマットハームス選手、武内理貴選手が駆けつけた。野間神社の神職による神事も執り行われ、およそ800平方メートルの田んぼで参加者たちが手植えを行った。
スタッフなども含めると当日は100人規模の人出となり、一忠さんは「こんなにこの地域に人が集まるのは春祭りのときくらい。近所の人からも『なんしよんか(何をしているのか)』と反響があった」と笑顔を見せる。
秋には約300キロの収穫を見込んでおり、収穫された米はバイクスが買い上げ、こども食堂への提供や寄付への返礼品などとして役立てる予定。
白川さん親子は「田んぼを通じた一連の活動が、世代を問わず、人と人とがつながれるきっかけになれば」と期待を寄せる。バイクス・まちづくり部の山本さんは「プロチームなので勝ち負けはもちろんあるが、それ以上に『まちのチーム』として応援される存在になりたい。スポーツ以外の取り組みをきっかけにバイクスと関わる人が増え、多くの人に『地域のチーム』という意識を持ってもらえたらうれしい。今治での取り組みをモデルに、県内にも広げていきたい」と、これからの展望を語る。