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「しまなみぽたぽた」著者・東屋めめさんに聞く!しまなみ海道ポタリングのススメ

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今治市を舞台にした4コマ漫画『しまなみポタポタ 瀬戸内チャリ散歩』。東京から今治市に引っ越してきた女子高生ななみを主人公に、ママチャリで気ままに散歩するポタリング部を通して、映えスポット巡りやご当地グルメ、今治あるあるがギュッと詰まった4コマ漫画です。今回、作者であり、ご自身も今治に暮らしながら自転車生活を楽しんでいらっしゃるという東屋めめさんにインタビューをさせていただきました。

漫画家デビューまでの道のり

——— 本日は、よろしくお願いします。まずは、漫画家デビューまでの道のりについて教えてください

愛媛県新居浜市で生まれ育ったのですが、物心ついた頃から絵を描くのが好きでした。周囲からは絵だけはよく褒められていたことを覚えています。それで高校生の頃には、「美術系に進もうかな」とぼんやり考えるようになりました。勉強が苦手だったこともあり、最終的には「得意なことを生かそう」と、大阪芸術大学の美術学科に進学しました。
卒業後は商業用POPをデザインする仕事に就きました。漫画とは無縁の世界でしたが、そこでデジタルツールを使ったデザインに触れたことが、デジタルで絵を描くことへの興味につながりました。

——— 漫画を描き始めたのは、その頃から?

はい。昔からギャグ漫画を中心に漫画を読むのは好きだったのですが、描くとなると全くの未経験。学生時代に描いていた絵とは全く違う、シンプルな線で表現する漫画の描き方に戸惑いました。それでもネットや好きな漫画を参考にしながら、見よう見まねで描き方を覚えていきました。
そうして仕事の傍ら、少しずつ描いた漫画を投稿サイトで発表するようになったんです。当時はネット上で作品を発表する人が増え始め、出版社も新人発掘に力を入れていた時期でした。そんな中、幸運にも竹書房さんからお声がけいただき、漫画家デビューのきっかけを頂きました。▲めめさんのポタリング熱に感化され、筆者もしまなみ海道をポタリングしてきました。写真とともにお楽しみください!

地方でしか描けない漫画を描きたい!

——— 2006年に「ご契約ください!」で漫画家デビュー。2008年には「リコーダーとランドセル」の連載が始まり、テレビアニメ化もされるなど、一躍、人気漫画家としての道を歩まれてきました。

デビューが決まったのは、私が今治に来て間もない頃でした。それまでは10年以上、大阪や広島を拠点に生活していたのですが、夫の仕事の都合で今治に引っ越してきたんです。今治生活ももう20年近くになりますね。

デビュー当時は今治市内のフリーペーパー制作の会社に勤めながら漫画を描いていました。その後、連載が増えてきたので、思い切って会社を辞め、専業漫画家に。もともと人付き合いはあまり得意ではないので、「引きこもって仕事ができるなんて最高!」と思いましたね(笑)

▲サイクリストの聖地との呼び声も高いしまなみ海道。自転車歩行者道は無料で通行できる

▲サイクリング道の入り口から見下ろす造船所群の景色。これもまた今治ならでは

——— 2022年には、しまなみ海道を舞台に「しまなみぽたぽた」の連載をスタートされました。

いつも、しまなみ海道をスクーターで渡っていたのですが、自転車で楽しそうに走っている人たちをよく見かけていました。当時はちょうどコロナ禍で人が減り、サイクリングが密にならないレジャーとして注目されていた時期でもありました。

そんな背景もあり、レンタサイクルでしまなみ海道を自転車で走ってみたら、すごく気持ち良かったんです。車やスクーターだと「シューッ」と通り過ぎてしまうところを、自転車だと徒歩よりは速いけれど、確かに車よりはゆっくり。風景を眺めながら走るのにちょうどいい速度なんです。
新しい連載のネタを探していた時だったのですが、「これは面白い!」と思い、自転車をテーマに漫画を描くことにしました。

▲ランニングしている人や散歩している人も。しまなみ海道が日常にある生活って、改めて贅沢!

元々、せっかく地方に住んでいるのだから、地方でしか描けない漫画を描きたいという思いはあったんです。特に、今治にはしまなみ海道以外にもたくさんの魅力があるのに、あまり知られていないのがもったいなくて…。

一度都会に出たからこそ、愛媛ならではの文化に気づいたり、方言が面白かったり、「こんなすてきなところがあったんだ!」と、新鮮な気持ちで発見したり。地元の新居浜でいえば、お祭りの日に会社が休みになるんです。それまでは当たり前に感じていましたが、外に出て初めて「祭りだからって小学校は休まないんだ…!」と知って驚きました(笑)

——— それは今治の人からしても不思議な文化です(笑)

そうした面白さが、しまなみ、そして今治にはたくさんあると感じています。それでも自分の中でも知らず知らずのうちに「当たり前」になっていて、編集者の方から「これって他の地域の人には分からないんじゃない?」と指摘されてハッとすることもあります。外からの視点は大事だなと思いますね。

風を切って、歴史と出合う!寄り道だらけのポタリング旅のススメ

——— めめさんの漫画は、今治の風景や文化がリアルに描かれているのが魅力の一つですが、取材でも実際に自転車で走っているんですか?

はい、自転車で行ける場所なら、必ず一度は自転車で行くようにしています。自転車で走ると、車では気づかないような小さな発見があったり、自転車でしか行けない場所にたどり着いたりと、出合いがたくさんあります。▲自転車なら降りられる「馬島」。階段を下り、橋の下をくぐった先にエレベーターが。さながら探検気分

▲「お隣の島」大島の造船所は、大迫力!

今治城には漫画を描くために初めて行ったんですが、お堀には、いろいろな種類の魚がいるんですよね。そうした情報を詳しく紹介しているパネルがあったりして、面白い情報がたくさん隠されているんですよ。そんな風にじっくり観察すると、町の中にはたくさんの面白いところがあります。

風を感じながら、自分のペースで景色を楽しんだり、行きたいところに寄り道したり。「ポタリング」は町を楽しむのにぴったりなんです。

▲漫画の中で「干してる」と表現された駐輪ラックもあちこちに

——— めめさん自身もすっかりポタリングのとりこなんですね!

しまなみ海道を自転車で走ってから、すっかりその魅力にハマってしまいました。運動は苦手な方だったのですが、自転車だったらどこまでも走れますね。

いろいろな場所へ自転車で行くようになりましたし、プライベートでもロードバイクと電動ママチャリを2台持ちしています(笑)。今治に住んでいて、自転車に乗らないのはもったいないです! しまなみ海道だけでなく、今治市内にもサイクリングコースがたくさんありますし、自転車に乗るのには最高の環境ですよ。

▲大島のバラ公園の「バラアイス」。あちこちで美味しいものを食べながらのんびり進めるのもポタリングの魅力

他のスポーツって、1人ではなかなかできないものですが、自転車は気軽にできます。気ままに、自分のスピードで寄り道をしながら、ちょっと仕事の合間に乗ったり、リフレッシュを兼ねて、気になるカフェに行ったり、食べたいものを目指したり…。そういう目的地があるとまた、楽しいですね。

▲道の駅 よしうみいきいき館の鯛カツバーガーなど、漫画の中ではご当地グルメもたくさん登場!

今治にはまだまだネタがたくさん転がっている

——— めめさんは今治のどんなところがお好きですか?

一番は、大三島のゆったりとした雰囲気が好きですね。中でも大山祇(おおやまづみ)神社の宝物殿は、歴史好きにはたまらない場所です。刀やよろいなど、貴重な文化財がたくさん展示されていて、本当に見応えがあります。

正直、新居浜で過ごしていた学生時代には、今治に来る用事も特になく、通り過ぎるだけでした。確かに、大阪に住んでいる時は大阪城に行ったことがなかったし、広島に住んでいても広島城に行ったことがありませんでした。日常的な風景の中に、わざわざ行こうとは思わないんですよね。
でも一歩外に出て、町を見つめてみると新鮮な発見があるんです。

そういう意味では、まだまだ今治をテーマに描きたいものはたくさんあります。村上海賊も全然まだ手付かずですし。漫画の設定が「郷土研究部」なので、そういう意味でもネタの「ストック」はたくさんあります。どんどん今治の文化や歴史にまつわるスポットに光を当てていきたいですね。

——— 最後に読者に一言、お願いします。

「自転車に乗ってみたい」「しまなみ海道に行ってみたい」といった感想をよく頂きます。中には、聖地巡礼のような楽しみ方をしている読者の方もいらっしゃるようで、本当にありがたい限りです。

私の漫画を通して、 ポタリングって楽しそう! 今治って面白そう! そう思っていただけたらうれしいです。家にあるママチャリやレンタサイクルでも十分楽しめます。

ぜひ気軽に、しまなみ海道へ遊びにいらしてください。

———ありがとうございました!

▲子供用の自転車と、糸山サイクリングターミナルでレンタルした電動自転車で、楽しいポタリングになりました!次はいざ大三島まで…!

東屋めめ さん

愛媛県新居浜市出身で現在は今治在住の女性漫画家。代表作の『リコーダーとランドセル』はテレビアニメにもなった。現在もオンライン漫画サイトにて4コマ漫画を執筆中。

しまなみぽたぽた(連載中)
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