4代目店主を務める野間靖大さんの先代が、1924(大正13)年2月の今治駅開業に合わせて開店した同店。靖大さんによると、開店以前は現在の吹揚小学校周辺で料亭を営んでいたという。駅に出店して以降は主に駅弁の車内販売を手がけていたが、利用者の減少などによりJRがサービスを終了。その後は日替わり弁当の配達を始めるなど、時代と共にサービスも変化させてきた。
元々は銀行員として働いていたという靖大さん。3代目店主である父が体調を崩したことをきっかけに、「やらなしゃーないか」(靖大さん)と調理師学校に通い、家業を継いだ。2012(平成24)年には社長の座に就いた。
現在は、駅構内に売店とうどん店、駅前に本店を構え、3店で営業する。
靖大さんは「うどん店を開業するときには、香川まで泊まり込みで習いに行った」と振り返る。看板メニューの「鯛めし」「瀬戸の押寿司」は変わらぬ味を受け継ぐが、時代に合わせて進化も。2年前に急速冷凍の技術を取り入れ、全国発送の対応を始めた。「冷凍だと300日間、日持ちし、味も生と変わらない」と太鼓判を押す。
「100周年を迎えたが、あまり実感はない」と靖大さん。長い歴史の中で、特に「コロナ禍は大変だった」という。「駅に人がいなくなり、ゴーストタウンのようだった」(靖大さん)。そうした中、2021年にはテレビ番組「マツコの知らない世界」で同店の弁当が紹介され、全国から注文が殺到。「大きな話題となり、オンラインでもたくさん買っていただいた」と振り返る。
「駅弁屋の数は年々減っていて、『絶滅危惧種』になっている」と靖大さん。「世の中も変化していく中で、これからはオンライン販売にさらに力を入れるなど、やれる限りは頑張って続けていきたい」と意欲を見せる。
営業時間は、本店=6時~18時、駅構内売店=8時~19時30分、うどん店=11時~18時30分。本店は日曜定休。