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西条高校前にカツ丼店「道」 火事で閉店した今治の食堂「たつ」の味再現

半熟卵とカツとデミグラスソースの組み合わせが独特な「カツ丼」(1,100円)

半熟卵とカツとデミグラスソースの組み合わせが独特な「カツ丼」(1,100円)

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 カツ丼店「道(みち)」(西条市明屋敷)が5月10日、西条高校の正門前にオープンした。

西条高校前にカツ丼店「道」、店主の福田さん夫婦

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 同店を開業したのは、今治市別名で43年にわたって営業し、火災で5年前に閉店を余儀なくされた食堂「たつ」の店主の長女・福田恵子さんと夫の高広さん。「店の味を引き継ぎたい」という高広さんの熱意が、開店のきっかけになったという。「たつ」のカツ丼は、半熟卵とカツとデミグラスソースの組み合わせが独特で評判を呼び、市外から訪れる客も多かった。

 「長年愛されていた味が途切れてしまうのは、もったいないと思った」と話す高広さん。一方、恵子さんは「幼い頃から食堂の手伝いをして、大変さも知っていただけに、自分が引き継いで店を開くつもりは全くなかった」と振り返る。加えて、「たつのお母さん」として食堂を夫とともに切り盛りしてきた恵子さんの母も「店を開くのは絶対に反対だった」と熱を込める。理由は飲食業の厳しさや、2代目を背負うことへの重圧に加えて、高広さんがプロの空手家で「二足のわらじは履けないだろう」と思っていたことにもあるという。

 高広さんは極真空手の師範で、新居浜市と西条市に空手道場を経営するプロの格闘家。日本代表として全世界空手道選手権大会にも出場するなど活躍してきた。飲食業の経験はなかったが、「自分も好きだった味を、伝え続けたい」と開業への熱意を長年、2人に訴えてきた。恵子さんの母も「最後は根負けした」と言い、今年に入ってから本格的に話が進んだ。開業に向けては、恵子さんの母が今治から西条までバスで通い、味見などを交えながら丁寧に店の味を伝えてきた。

 席数は15席で、メニューは「たつ」から受け継いだ「カツ丼」「カツ定食」「ヒレカツ定食」(以上1,100円)、「ラーメン」(800円)など。高広さん自身、当時「たつ」でよく食べたという「カツカレー」(1,100円)も、開業後、客の要望を受けてメニューに加えた。味を忠実に再現することを目指し、調味料なども当時使っていたものを仕入れている。カツは注文を受けてから衣をつけ、揚げる。これも当時のスタイルと全く同じだという。

 「道」という店名は恵子さんが名付けた。「全く迷いなく、直感で付けた」というが、後日、実は火災で亡くなった恵子さんの父の戒名が「道」だったことが判明。「父に見守られていると思って、店に立っている。8割以上のお客さまが『たつ』の思い出話をしてくれて、いろいろな方の記憶に残っているのがうれしい」と話す。

 「『またこの味が食べられるとは思わなかった』と涙を流してくれるお客さまもいる。当時の味を覚えてくれて、懐かしがってくれる人がいることに感謝の気持ちでいっぱい」と恵子さんの母。高広さんは「地域に愛される店にしていきたい。味を守り、丁寧に伝えていけたら」と意気込む。

 営業時間は、平日=11時~14時30分、土曜=11時=15時・17時~20時。日曜・祝日定休。曜日によって一部提供メニューが異なる。

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