かんきつ加工品の販売店「OMOYA.(おもや)」(今治市伯方町)がオープンして、7月28日で2カ月がたった。
自宅敷地内にある納屋を改修した同店。島内で栽培・収穫されたハッサクやマンダリンなど、旬のかんきつを使ったソルベやゼリードリンクのほか、かんきつの香りを生かした精油やアロマミストなどの商品を販売する。
経営は、京都市から昨年春に移住した小川幾子さん・竜也さん夫婦。「京都で仲良くしていた知人から、『実家の伯方島から送られてくる』というかんきつを購入し、初めて食べたときにすごくおいしくて感激した。毎年、時季になると購入していた」という2人に転機が訪れたのは一昨年。「(かんきつを)生産していた知人の祖父が高齢のため、『今年で最後』と聞いた。居ても立ってもいられず、『じゃあ、継ごうか』と決意した」と幾子さん。その頃、京都市内の自宅兼店舗で焼き肉店を営んでいたが、「焼き肉屋はいつでもできる。畑は今継がないと、なくなってしまう」と、迷いはなかったという。
四国は訪れたことがなかったという2人。当初は夫婦どちらかが単身移住する形を検討したが、何度か伯方島に通ううちに気持ちに変化が訪れた。住まいとなる空き家の手配や勤務先のめどが立ったこともあり、一家での移住を決断した。
現在、竜也さんは就農し、継承した農地と新たに取得した畑、合わせて16反でかんきつを育てる。「農業は未経験と言うとよく『大変ではないか』と聞かれるが、大変だと思ったことはない。向いていると思う」と笑う。
幾子さんは島内で介護の仕事に就きながら、かんきつ加工品の企画や販売を手がける。「実際に継いでみると、傷や規格外などで廃棄されるかんきつがたくさんあることを知り、もったいないと加工品の製造を考えた。無農薬のハッサクを生かせないかと思い、実はジャムや甘酒に、皮はアロマに加工することにした。現在は直売のみだが、今後はオンライン販売などで販路拡大を目指している」と意気込む。
2人は、3歳児から中学生までの5児を育てる親でもある。幾子さんは「子どもたちもそれぞれ伯方島の環境に順応して過ごしている」と話す。「始めは、家の前で子どもが自由に遊べることにも感動した。周りに支えられながら、島暮らしを楽しんでいる」と竜也さんも続ける。
今後については、「せっかく始めたからには、行けるところまで頑張りたい。キッチンカーで出張販売するなど、新たな展開も考えていきたい」と幾子さん。竜也さんは「今はまだ教えてもらいながらだが、かんきつをおいしく実らせられるよう、まずは独り立ちを目指したい」と話す。
営業は金曜・土曜・日曜の10時~14時。